池田めぐみ

2008年の北京オリンピックで、日本人としては過去最高の15位となったフェンシングの池田めぐみさん。日本女子フェンシング界をリードし続けた存在でしたが、2度の大きな怪我や病気に見舞われる挫折続きの競技者人生でした。そんな池田さんが語る挫折にも負けない、本当に強いリアルチャンピオンとは?

Profile

池田 めぐみ(フェンシング・エペ)
いけだ めぐみ
2008年北京オリンピック日本代表
2010年アジア大会金メダル
JADAアスリート委員
2013-03-21

池田めぐみさん昔からオリンピックへの憧れを強く持っていた池田さん。5歳の時、ロサンゼルスオリンピック(1984年)の入場行進を見て、「私もここにいきたい!」とテレビの画面の中に入ろうとしたほど熱中したと言います。その後、姉の影響もあって高校1年生でフェンシングを始め、3年生の時のインターハイで4位に。

池田:そのことがきっかけで、強豪の東京女子体育大学に誘われたんです。東京で暮らすことに不安はありましたし、医学系の大学に進むことも考えていたので迷いましたが、厳しい環境に思い切って飛び込むことで自分が成長できると思い進学を決めました。

しかし、地元の大学に進学するとばかり思っていた両親は、この決定に大反対。

池田:すぐに家族会議が開かれまて、大議論が巻き起こりました。父も私も頑固者なので、一向に折れず長引きましたね(笑) 結局は最後に父が「オリンピックに出場するくらいの覚悟があるなら進学していい」と言い出したんです。その時、初めて自分のしている競技のこととオリンピックが結びついたというか、それまで夢でしかなかったものが、具体的な目標に変わった瞬間でしたね。

その約束を果たすべく、大学は猛練習に励み、卒業後の2004年にはアテネオリンピックの出場権を見事獲得します。さらに、2008年の北京では、日本人としては過去最高の15位に。

弱さを受け入れることで強くなれる

こうして見ると、輝かしい順調な競技者人生を歩んできたかのように見える池田さんですが、実は大学の時と北京の前に人体の怪我、そして引退のきっかけになった乳がんと、何度も挫折と困難を味わってきた経験があります。

池田:一度目の怪我をしたときは、もちろん落ち込みましたけど、すぐに「怪我をして復帰した後の風景を見ていたい」と前向きに考えるよう頭を切り替えました。周りからは「強いね」と言われましたが、全然そうではなく、ただ単に自分の弱さを受け入れていただけなんです。不安だったり、自信がなくなったりしたときも、目をそらさずありのままの自分を受け入れる。そういう自分を認めてあげ、本当に辛かったら素直に「辛い」と誰かに打ち明ける。リハビリ中には歴史小説をたくさん読んでいて、「自分が悩んでいることなんて、昔の人はとっくに克服したことなんだ」と思ったら、だいぶ気が楽になりましたね。

池田めぐみ怪我を克服して強くなったのは、精神的なものだけではありません。怪我の予防法や体の自己管理、どうしたら体を無駄なく機能的に動かせるか、など自身の肉体を客観的に見つめ直すことで、フィジカル面での強さも得たと言います。

池田:怪我は挫折なんかじゃなく「変化」だと思います。変わるチャンスをもらったと思い、精一杯乗り越えるべきものなんです。だから乳がんを患って、一時は「死んでしまうかも」と思い悩んだときも、「あ、私、乗り越え方を知っている」とすぐに前向きになることができました。病気も「変化」なんだと。

だからこそ、ドーピングをしてまで勝とうとすることは、スポーツの価値を損ねることだと、池田さんは考えています。

池田:弱いところを認め、受け入れることで人間は強くなれます。ドーピングするということは、自分の弱さに目をそらすことです。弱さに負けるということです。スポーツの価値は、挫折を乗り越えて強くなることにあるのに、それでは本末転倒ですよ。

現在は、JADAなどの活動をとおし、その価値観を次世代に伝えている池田さん。

池田:まずは、ドーピングについて正しい知識を身につけること。そして、それを広めることが大切です。嬉しかったのは、JADAのアウトリーチプログラムで実際の試合会場に行って啓発活動をしていたときのこと。ずいぶん前に同じプログラムで説明した選手のお母さんが声を掛けてきて、「息子が世界レベルの大会に出るようになったので、以前教えてもらったドーピングの知識が役に立っています」と仰ってくれたんです。これからも、たくさんの種を植えて、アンチ・ドーピングの芽があちらこちらで芽吹くように頑張っていきます。

さらに、池田さんは、「自分はスポーツをやらないから関係ないと思わず、色んな方に興味を持ってもらいたい」と呼びかけています。正しい知識を身につけ、伝えることで新しい「リアルチャンピオン」の芽が生まれることに繋がるかもしれませんね。